重松清の「疾走 上・下」読み終えました。主人公のシュウジは広大な干拓地と水平線が広がる町に住む走る事が好きな平凡な中学生。兄弟には両親自慢の兄シュウイチがいてシュウジにとって大好きな兄だった・・・小学生までは・・・。中学生になりシュウイチは地元で有名な進学校(高校)に入る。町は「ゆめみらい」と名付けられた巨大リゾートの計画が進行し立ち退く住民が増えていき町並みは変わろうとしていた・・・それと同じくしてシュウイチにも変化が・・・。シュウイチが堕落し犯罪に手を染める・・・そこからシュウジ一家の苦難の日々がはじまり家族はバラバラとなっていきます。
上巻を読むにあたり結構時間をかけた気がします。読む時間があまりなかった事もありますが、進行役のシュウジをさす呼び方「おまえ」に、読んでいてなかなか慣れなかったというのも理由の一つかもしれません。全ての登場人物の心理描写を表す視点「神の視点」と人称が「二人称」であることが本作品の特徴と思います。下巻になってやっと慣れ、面白みが増しました。
下巻を読んで、暴力と性の激しい描写が続き、読んでいて「馳 星周」作品読んでいるのかなぁと錯角したりして衝撃のクライマックスへ導かれていきました。この作品にて切っても切れないのが「聖書」です。上巻にて過去を背負う神父に出会う事により、シュウジ達は聖書に接します。聖書によって登場人物の心理に影響をもたらすのですが、読んでいて聖書に対して、いろんな苦難に陥った人々の心の救いになるような沢山の言葉が書き綴られているんだと今頃になって感心いたしました(読んでいて聖書が苦手だとも気づく)。
読み終えて心に残ったものは「孤独」、「孤高」、「人とのつながり」この3つでした。
読んで得られる感動は決して爽やかではありませんが、読んで損はない作品だと思います。是非読んでいただきたいです。映像でもあるようなのでそちらででも是非・・・